ゆるふわdiary

好きなこと(特に本)についてゆるっとふわっと語るブログです。

お気に入りweb小説① ~白馬に乗った従者様~

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明けましておめでとうございます(^-^)
ちょっぴりお正月っぽい写真を貼ってみました。


面白いWeb小説を読んだ後、誰かにこの感動を伝えたいと思っても、私が読書の記録をつけている読書メーターではweb小説をレビューする機能までは備わっておらず(いや、どうやら未登録の小説は自分で登録してレビューを書いてもいいらしいのですが...)、twitterでは文字数が少なすぎてあまり詳しくは書けないし、あー誰かに話したいこの気持ちという欲求の置き場がありませんでした。そこでこちらのブログに記していこうと思いました。
ネタバレありなのでご注意下さい。


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白馬に乗った従者様(作:未礼)
https://novel.pixiv.net/works/2462



貴族令嬢のフローレンスは病弱で一年の半分はベッドの上で過ごしていた。難しい手術を受け命を落とす危険性は無くなったものの、検査の結果子供が産めない体だと宣告されてしまう。決まっていた縁談は無くなり、代わりに父親ほど年の離れた男性との縁談が持ち込まれたことを噂に聞き嘆いていたフローレンスは、両親から従者であるスタンレイとの婚約が決まったと告げられて...。


pixivノベル大賞~2020Spring~恋愛部門受賞、というのも納得の素敵な物語でした。
普通の結婚を諦めかけていたフローレンスの相手に決まったスタンレイは、フローレンスの父親に従者として仕えていて、一緒に長い時間を過ごしてきた兄のような存在の男性です。スタンレイが従者を辞め継ぐことになった実家の商家の都合で、スタンレイが跡継ぎをもうける必要がないといったことからまとまった縁談でした。
その時まで二人の間にあったのはあくまでも主従関係で(スタンレイはほぼほぼ最後までフローレンスをお嬢様と呼んでいる)、最初フローレンスは突然そんな話になり夫婦になった自分達を想像できないと戸惑う訳です。

しかし結婚の準備をしていくうちに、スタンレイを徐々に男性として意識するようになってきます。
結婚後披露するダンスの練習を一緒にしている時に、スタンレイの大きな手や体を意識してしまい上手く踊れなくなってしまうフローレンス。それに比べて態度の変わらないスタンレイに、もしかしたらこの結婚は生真面目なスタンレイにとって仕事の一環なのだろうか、という疑問がわいてきて、思わず「私と(結婚したら)キスするの?」と聞いてしまうのです。
この辺り、すごく好きなシチュエーションです!ダンスって体が密着する動作なのでどうしてもパートナーとの体格の違いに気づいてしまうんですよね~。また読んでいくとわかるのですが、この時フローレンスが放った一言がジワジワとスタンレイに効いていくことになる訳で、改めて読み直すとこのシーンはニマニマしてしまいます。

スタンレイの良き妻になる為に花嫁修業に励むフローレンスなのですが、その気持ちの裏側には、子供を産めない自分がスタンレイに負担を強いてしまうのではないかという負い目があり、それが段々とフローレンスを追い詰めていきます。
そしてスタンレイの血を継いだ子供を彼に抱かせてあげることができないとフローレンスが思い悩んでいる時に事件が起こってしまいます。使用人達がフローレンスを欠陥人形と呼び、スタンレイは将来外で愛人を作り子供を産ませるのではないか、と話しているのを聞いてしまうのです。
辛いですよね...好きな人の子供を産めず、またその好きな人が他の女性と浮気をするのも許さなければならない立場だったら。

しかし、不安に囚われていくフローレンスにスタンレイが語った心の内、それがとてもいいのです。
幼いフローレンスと初めて会った日に、フローレンスは既に自分はいずれ死んでしまうのではないかと悟っていて、その絶望を知ったスタンレイがずっとフローレンスが幸せになることを願っていたこと、手術をし健康になった後は彼女が幸せな結婚ができるように自ら結婚相手を探したこと、そしてそれが破談になった時それならば自分がフローレンスを幸せにすると決意したこと。
決して強要されたのではない、「俺」自身がそうしたいと決めたこと、あなたと結婚して不幸になるつもりなど微塵もない、と強い言葉で言い切るスタンレイ。そこに深い深い愛情を感じて、私は泣いてしまいましたよ。
本当にフローレンスを大事な大事なお嬢様として慈しんでいたんだね...そして普段は「私」なのにこの時だけ「俺」になった一人称に、言葉が乱れても構わない、どうしてもフローレンスに伝えたいという本気の強い意思を感じました(恐らく彼は主人達に仕えている時は私と言い、本音を話せるプライベートな時間のみ俺と言っているのでしょう。たぶん)。

フローレンスの憂いが解け、迎えた結婚式、そしてその夜の二人の会話が初々しくて読んでいる私がキャーとなりました(笑)。
そして明かされるスタンレイの恋情...いつも涼しい顔をしてフローレンスをどう思っているのかはっきりとしてなかった訳ですが(もちろんフローレンスを大切にしているのはわかってましたが)、例のダンスの場面から実はずっといろいろ我慢を重ねていたらしい...頑張っていたんだねスタンレイ...ここでもついニマニマしてしまいました。
フローレンスはお嬢様だけあってスタンレイに命令できる立場なのですが、そのフローレンスにちょっとタジタジになりながら対応するスタンレイが可愛いです。

フローレンスを愛して止まない両親(特にパパ)、厳しいけれどフローレンスが使用人に陰口を叩かれた時には怒り狂い使用人に鞭を振るった家庭教師のダーナなど、脇の人々も印象深く良かったです。


フローレンスの戸惑い、恋心、そして葛藤、それに対するスタンレイの誠実で揺るぎない思いが丁寧に綴られていて何度でも読み返したくなります。
書籍化はないのかな?中短編だから一冊にするにはもうちょっとページ数がいるのかな?そうしたらスタンレイサイドとか、フローレンスとスタンレイが出会った頃のエピソードとかぜひ加筆してほしい...。

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